無意識と私と羊雲に乗って

催眠療法と無意識さんに魅せられた人。

水面に映る鏡

万華鏡をのぞいた時に、さまざまな模様の柄が四方に散らばっているように、私の目に映るさまざまな風景は、私を通していろんな角度から散りばめられています。

その散りばめられている光景のひとつひとつに「言葉」をつけようとして、こうやって毎日生きているのだと思います。

 

今朝、出勤途中にふと、「水たまりに映る自分の顔」のスクリプトが浮かんできました。

その物語というのは、私が雨上がりの水たまりをのぞきこんで、水たまりの中に自分の顔を見た光景から始まるのです。

 

そうしてのぞいた水たまりの中に映る私の顔の表情はよく見えなくて、水面がゆらゆらと波紋を広げていく様子を眺めることができます。

 

その波紋は音もなく広がっていくと、水たまりの端まできた時にスッと消えて、そうしてまた新たな波が音もなく広がっていくのです。

 

そうしてどんどんどんどん新しい波が生まれては広がっていくので、私はなかなか自分の顔を水面の中に見ることができずに、ひたすらじっとその波紋の広がりを眺めているのです。

 

そんな中、私は「どうして自分の顔を、この水面に映して、そしてそれを眺めたいのだろう」と疑問に思い始めるのです。

 

私は、自分の顔をよく知っているはずです。なぜなら、毎朝鏡で自分の顔を見ているからです。

 

だけど、自分の呼吸の音を聞きながら、静まり返ったこの水たまりのある公園で、私は一生懸命自分の顔が見れるように片時も水たまりから視線を外さないのです。

 

風が、ビューッと吹いて、私の頬を強くなぞります。

 

そうすると私の視界は、自分の長い髪の毛で覆い隠されて、前が見えなくなってしまうのです。

 

だけど私は、風に舞う髪を整えることなく、風に吹かれるがまま横に流される髪をそのままに、大きくうねる風の音にただ耳を傾けるのです。

 

そして、強い風の詰めたさを肌に感じた時、私はひとつ、大きく深呼吸をするのです。

 

深呼吸をしてから再び水たまりに視線を落とすと、そこにはくっきり自分の顔を映った水たまりがあります。

 

風がやんで、波紋が立たず、その水たまりは太陽の光を反射してキラキラ輝いているから、私はとても直視できなくて、するとあたりから蝉の声がたくさん聞こえてくることに気づくのです。

 

途端にジリジリと暑い日差しを腕に、頬に、首筋に感じて、私はまぶしくて細めた目のまま急いで立ち上がったのです。

 

片手を空に向けて太陽の日差しを遮りながら空を見上げると、そこには真っ青な空ともくもくと空に広がる入道雲が見えるのです。

 

蝉の声が一層強くなったことに気づくと、私はふと我に返ったような感覚になりました。

 

「今まで何をしていたんだっけ?」と急に思い起こすと、私はもう水たまりには目もくれず、水たまりに背を向けて公園を後にするのです。

 

公園には、あつい日差しを受けてだんだん小さくなっていく水たまりがあるだけで、その水たまりはやがて消えてなくなり、そして平らな地面となってまわりの土と区別がつかなくなるのかもしれません。

 

誰もいなくなった公園に、ビューッと強い風がもう一度、吹いてきます。

 

その風がやんだ時、そこには先ほどまでのさわがしいほどの蝉の声はなく、静寂だけがただ広がり、夜に向かって冷たい空気と静けさが広がっていくのでしょう。

 

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昨日の予告と全然違う、スクリプトでした。

心に「これは何のスクリプト?」と聞くと、「君が自由になるスクリプト」と返ってくるのです。

 

しがらみから解放されて自由に生きるために、私たちは何かを捨てて、そして新しい世界を見に行く準備をするのかもしれません。